味いちもんめ 3
あべ善太 作/倉田よしみ 画
ある日、「藤村」の休憩室でテレビを見ていると、伊橋の父親が映し出された。自分の家庭について、多くを語らない伊橋だが、その父親は大学教授で高名な経済学博士であった。今から6年前、大学進学を強要する父親と衝突した伊橋は家を飛び出し、以来一度も帰っていないのだ。ある日、ホテルのパーティで出す屋…
味いちもんめ 29
伊橋は、将来を嘱望される若手料理人の会・「研鑽会」で冬瓜料理をつくることになった。しかし本番前の予行演習で、大料亭の息子の立原らに仕組まれ冬瓜料理に失敗してしまう。腹を立てた伊橋は、なんとか本番では立原に勝とうと練習を重ねるのだが……
味いちもんめ 28
今日も「藤村」に、常連の社長と円鶴師匠が来ていた。しかし、ここ2か月前からこの二人以上に「藤村」へ毎日のように通ってくる客がいた。しかも、若い女性。でも、特別酒が好きなようなようにも見えない。その女性がなぜ「藤村」に通ってくるのか気になる伊橋。どうやら、彼女は誰もいないマンションへ帰るの…
味いちもんめ 27
「藤村」と同名の料亭が東京・四谷にできた。店にとって同じ名をつけられるのも、あまり好ましい事ではないが、問題なのはこの店が本家「藤村」の評判を借りて商売に利用しているらしいということだった。ある日、伊橋は書店で偽「藤村」が掲載されている記事を見付けた。その説明には堂々と新宿「藤村」の姉妹…
味いちもんめ 26
全国の競馬ファンが注目するビッグレース“日本ダービー”。その前夜、「藤村」に常連客の社長が桜肉を持って現われた。明日のダービーに勝つために縁起を担いで、みんなで桜肉を食べようというのだ。ところが、ボンさんだけが箸をつけようとしない。実は、ボンさんには桜肉にまつわる悲しい思い出があったのだ………
味いちもんめ 25
小つるの兄弟子にあたる鶴吉が師匠の円鶴から突然「(今後一年間)都内で落語を語るこたァ 一切許さねぇ!!」という“一年間の江戸払い”の宣告を受けてから一年。今日の高座がうまくいかなかったら、また“江戸払い”になってしまうのかも? と伊橋に相談する小つるは、兄弟子の鶴吉が心配でならない様子。しかし…
味いちもんめ 24
「藤村」に新しく入った京子。仲居見習いとして、ベテランの仲居・岩田の指導のもと働いている京子だが、慣れないためか失敗も多い。下足番をしているときには特に失敗が多く、帰りの客の靴を岩田のように、間違えずに素早く出すことができない。自信を失いかけ、下足番なんて絶対にイヤ! と、グチをこぼされた…
味いちもんめ 23
「煮物の味付けがおかしい。薄すぎる」と、ある客からクレームが来る。そんなハズはないと興奮気味の伊橋に、熊野はもう少し濃い目の味付けにしろ、と命ずる。「藤村」の味を守らなければいけないのでは、と不満気な伊橋に、熊野は「“藤村”の味を守ることは大事だが、少し譲歩すればすむことだったら、時には客…
味いちもんめ 22
12億円もの契約がかかった大事な接待の場所に「藤村」が選ばれた。接待の相手は、経営の神様と言われた大谷電機の元・社長の大谷総一郎。大谷は、どんな料亭で接待されても必ずカツ丼を注文するのだという。この情報を得た熊野は、煮方の伊橋にカツ丼作りを任せる。責任の重大さを感じた伊橋は、昔「藤村」の立…
味いちもんめ 21
「藤村」の常連である“社長”は、今日のデザートが葛切と聞いて「実は…」と話し始めた。ある日、“社長”は、さる女性社長と、お茶を飲んで話すうちに、その言葉遣い、立ち居振る舞い、奥ゆかしさにすっかり魅了されてしまったと語る。その時のお茶受けに出されていたのが葛切だったという。この優雅な女性に対して…
ほか92件
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