Creator’s Lounge/麻生羽呂氏に聞く

ブラック企業で生きるより、ゾンビ世界の方が最高!?
青春ゾンビ活劇『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』刊行記念
原作者:麻生羽呂氏インタビュー
ゾンビもの新ジャンル開拓のきっかけとは――?

 『今際の国のアリス』シリーズの麻生羽呂氏による原作、『ハレルヤオーバードライブ!』の高田康太郎氏を作画におくる最新作は「ゾンビもの」!
ブラック企業に勤め、生きる死体のような生活を送っていた男・輝(アキラ)が、ゾンビパニック発生を皮切りに人生を見つめ直し再生していく物語が『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』だ。
『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督も、「笑った。泣いた。考えさせられた。こんな”ゾンビもの”を待っていた」と絶賛の本作。待望の1巻発売を記念して、原作者の麻生羽呂氏に作品の誕生秘話や、作画担当の高田康太郎氏との関係について聞いた。

【プロフィール】

『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』

麻生羽呂(あそう・はろ)

1980年1月4日、大阪府出身。関西大学工学部でDNAの研究をしていたが中退し、日本一周生活に入る。

旅を終えて漫画家になることを決意。2005年『YUNGE!』でデビュー。代表作に『呪法解禁!! ハイド&クローサー』『今際の国のアリス』など。

●「社畜」が「ゾンビ」に出会ったら?の新機軸

 「ゾンビ」と「社畜」をミックスすると面白そうだ、と思ったことがきっかけでこの作品はスタートしました。
 まずは新作を考えているときに「ゾンビものをやろう」という思いになりまして。ところが、ゾンビものは漫画や映画で相当にやり尽くされているんですよ。
 新味を探しているときに思いついたのが、「逆に、ゾンビを楽しいものとして捉えられる主人公を生み出そう」ということ。きっと「現実」の人の方が「ゾンビ」より嫌な人ですよね……だとすると「お、主人公は社畜か?」と。

 社畜―――。会社のために、我が身を投げうって働く人の自虐的な言い方です。僕自身は、徒歩やバイクやキャンピングカーなどで旅ばかりしている人生を送ってきておりまして、アイディアを思いついたはいいが、会社員経験がありません。さっそくサラリーマンの友人たちに取材。週末毎に飲みながら、「俺も明日からネクタイ締めて社畜のスイッチオンですわー」なんて言葉を耳にしますと、「よし、これ使える」なんてメモをしながら愚痴を聞きまくりました。話を聞いていくうちに、「これだったらゾンビの方がまだマシじゃないか」と何度も思いました。そうして、やりたいことは全部後回しにして会社の仕事に尽くしまくる主人公アキラの像が出来ていきました。

  • 『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』
    入社当初のアキラ。
    希望に満ち溢れている
    (第1話より)
  • 『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』
    入社3年目のアキラ。
    日々の仕事に疲れ、目が死んでいる
    (第1話より)

 そこで、彼をゾンビワールドに放り込みます。
「人は極限状態になると一番本心が出る」と考えていましてね。会社のことも家族のことも考えず、ただシンプルに「やりたいことをやろう!」という心持ちになるのは、ゾンビが出現する状況になるくらいじゃないかと。そこまで突拍子のなさや、切迫さが出現しないと、なかなか自由にはなれないのじゃないのかな。そこに十分皮肉は込めてます。
 ゾンビが象徴するもの? それは、プレッシャー、じゃないでしょうか。「早くやりなよ、早くやりなよ」と急かしてくれる圧力。アキラは「なぜ今の仕事をしているのか」「なぜここの会社にいるのか」という思考をしていなかったんだと思うのです。深く考えずに来たから、いわゆる”ブラック”と呼ばれる過重労働に出会ったとき、芯がないから潰れちゃった。そこをギリギリで、ゾンビに助けられるんです。逆に。

『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』

出社しなくてよくなった状況を知り、ゾンビそっちのけで喜びを爆発させるアキラ。

●作画の高田康太郎さんとはキャンプ仲間

 作画を担当してくださっている高田康太郎さんは、もともとキャンプをよく一緒に行くプライベートな友達です。毎回「この連載が終わったら実家に帰って農業と狩猟をやるんだ」なんていう人です。いつも現実から逃げたがっていて(笑)。
 だから、話が出来たときにピッタリだと思って「今どうしてます? 狩猟がやりたいですか?」と電話をかけました。「一緒に作品を作りませんか」と申し出たら二つ返事で引き受けてくださった。初期の原稿では主人公のアキラはもっと短髪の体育会系キャラだっ たのですが、高田さんが今の姿形を作ってくれて、よりしっくりとくる、共感されやすい主人公像ができました。

『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』

 アキラはバケットリスト(死ぬまでにしたいことリスト)を一つ一つ消していきます。夢を叶えていく人を見るのは気持ちいいですよね。連載がスタートしてわかったことは、アキラは、自分のやりたいことに向かって、能動的にどんどん前に進むので、書いていてとても楽しい。気分がいい。ノーストレスで執筆が進んでいます。
僕の執筆作業は、彼のバケットリストを作っていき、それを叶えてあげる話を書くことです。彼のバケットリストは、今、連載している「月刊サンデーGX」の誌上では36まで明かされました(2019年4月号現在)。
 アキラはどんなリストを持っているだろうかと考える作業は楽しかったです。最初に、「もしも僕自身が仕事を辞めたら何をやりたいか」をバーっと片っ端から書き出してみました。それから、過去の自分が20代の頃にやりたかったことを思い出して、またバーっと書きました。たとえば、昔の自分には「日本一周をしたい」「キャンピングカーで旅行したい」という夢があったのですが、それはもう叶えてしまいました。僕のリストと、アキラだったら何がしたいだろうと想像することと、それが合わさって、この漫画に出てくるバケットリストは作られています。

 『ゾン100』のためにリストを作っていくと、物欲だけではなく、行きたい場所、会いたい人、やってみたい経験などに頭を巡らせることになりますよね。
麻生羽呂個人のリストの100番目は何かって?
「最後の日がわかっているのなら、一番好きな人と、一日中一緒にいたい」。それは決めてあるんです。
 皆さんもバケットリストを一度作ってみてください。そして、リストを作って、ただの憧れに終わらずに、アキラのように夢を叶えていってほしいです。この作品がそのきっかけになるとうれしいですね。『ゾン100』と言わず、『ゾン1000』まで書いていきたいので、応援をよろしくお願いします。これから、さまざまな憧れや願いごとが登場していきます。そして、この作品がきっかけとなってバケットリストが流行るといいなと思います。ご期待ください。(談)

■『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』1巻の試し読みはコチラ
http://shogakukan.tameshiyo.me/9784091575616
■サンデーGX公式サイト
https://sundaygx.com/
『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』

入社当初のアキラ。希望に満ち溢れている(第1話より)

『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』

入社3年目のアキラ。日々の仕事に疲れ、目が死んでいる(第1話より)

『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』